グッバイステップ

同性同士の両親から慈しまれて育った柏木蛍夏は、穏やかで周囲に人が絶えない。
かたや、ロクデナシの父親とふたり、祖父の家に転がり込んだ吉峰岳は、転校前のトラブルで周囲に高い壁を作っている。

岳が転校してきた高校2年の夏、なにひとつ接点のないはずのふたりは出会った。
親友というに相応しく認め合ったふたり。
しかし、その関係は岳が蛍夏に対する恋心を自覚したことで少しずつすれ違っていく。

ゲイとしての性自認をもつ岳と、アセクシャルである自分を徐々に突き付けられ、追い詰められていく蛍夏。
高校卒業という岐路で別々の道を選んだふたりは、数年後、ともに昼休みを過ごした屋上への階段で再会する――。【全223ページ】

ステップ――踏み出すこと、前に進むこと、一段高い場所。
自分しか見えなくて誰かを傷つけること、大切な人を思うあまり自分が見えなくなること。
大切な人と踏み出す明日へ。

紆余曲折のすえ恋人同士になった蛍夏と岳は、互いの距離感を計りかねたまま、表面上は学生時代のように笑い合えるようになっていた。

相手への好意は間違えようがないのに触れることすらままならない。

ふたりは焦りながらも互いの気持ちを言葉に載せ、ゆっくりと前へ進んでいく。
出会って10年。未熟だった過去を受け入れ、ともに歩むふたりの物語【全189ページ】